従業員の横領・窃盗・背任等への対応について
弊事務所は、使用者側労働事件を多く取り扱っておりますが、昨今、従業員の横領・窃盗・背任等の刑罰に値する行為・就業規則に違反する行為が増えているように思います。
このような場合、会社としては、犯罪が成立したのですから、警察への被害の届出を考えるべきでしょう。
例えば、従業員がレジ銭を取ったというケースでは、従業員の地位等によって、成立する犯罪が異なります。
例えば、スーパーマーケットのアルバイトが、レジから現金を取ったとします。この場合は、「窃盗罪」となります。
アルバイトは、接客やレジ業務を行っていますが、売上(現金)の管理等は、通常店長等が管理しているとされるため、店長等が管理している売上(現金)を取ったということで、窃盗罪になるのです。
では、店長がとった場合はどうでしょう。店長ともなれば、売上(現金)を会社のために、常日頃から管理等する職務を負っていると考えられますので、業務上横領罪になることが考えられます。
刑法上の罪責として、窃盗罪は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金、業務上横領罪は10年以下の懲役となっています。
人事上の処分は、また、刑罰とは別に会社が行うこととなります。
犯罪行為については、懲戒処分が検討されるべきですが、その他にも、失ったお金について、どうやって返済してもらうのかという問題も解決しなければなりません。
例えば、会社が、従業員本人のことなどを考え、警察への被害の届出までは行わないという判断をしたとしても、原則としては、①できるだけ分割を避け、②連帯保証人を付け、③公正証書にて返済条件を取り決めることが必要です。
そして、返済が滞るという可能性に備え、④返済が滞った場合には、警察への被害届出を行うという条件も付しておくべきです。
なお、従業員の横領・窃盗・背任等の刑罰に値する行為及び就業規則違反については、懲戒処分を行う前に、処分の妥当性等については、検討する必要があるため、一度弁護士に相談して頂けたらと思います。