新型コロナウイルス感染症と会社の破産について

新型コロナウイルス感染症の影響により、売り上げの急激な落ち込みや資金繰りが困難になってしまったことが原因で、会社の清算や破産を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

会社の倒産手続きは再建型と清算型の二つに分類することができます。清算型の手続きというのは、債務を清算し会社を消滅させることです。いわゆる会社破産や特別清算などが挙げられます。一方、再建型の手続きとは、債務を圧縮するなどして営業を続けることで、民事再生又は会社更生等が該当します。

破産手続きを行う場合の要件として、債務超過と支払不能というものがあります。しかし、一見これらの要件に該当しているからといって、本当に清算・破産する必要があるかどうかは慎重に検証するべきでしょう。いくつか例を挙げてご紹介します。

①新型コロナウイルスの影響がなくなるとともに状況の改善が見込まれる場合
②売り上げの落ち込みや、資金繰りの悪化が一時的である場合

一時的に法人の債務が膨らんだとしても、特別な事情に基づくものであり時間が経てば債務の額が減るような場合であれば、それは債務超過とは評価できません。
また、支払不能には定義があるものの、一律に数値が決まっているわけではなく、法人の財務状況毎に個別具体的にその判断をしていくことになります。

たとえ、数値の上では大きな負債があったとしても、長い目でみて支払が可能なのであれば、それは支払不能とは言えません。
以上のような場合には、融資を受ければ現状を乗り越えられる可能性があります。

企業支援の様々な施策が案内されているため以下のサイトもご参考ください。

・経済産業省(新型コロナウイルス感染症関連 経済産業省の支援策)

https://www.meti.go.jp/covid-19/index.html

・日本政策金融公庫

https://www.jfc.go.jp/(新型コロナウイルス感染症に関する相談窓口のご案内)

③事業の収益から黒字が見込めない場合

債務整理を行っても、返済の見通しが立たないので再建手続を選択することは難しいと思われます。

④資金繰りの見通しが立てられない場合

事業を続けていくためには資金繰りが確保されていなければなりません。資金繰りの見通しが立たない場合は事業の継続は断念せざるを得ません。

以上のような場合には、会社破産を選択しなければならなくなる可能性が高いでしょう。

ただし、破産手続きを行う場合に注意しなければならない点があります。

〇特定の債権者に優先してお金を支払うようなことはしないこと

ほとんどの場合、会社の破産手続きは管財事件として行われます。管財事件となった場合、破産管財人により破産会社の財産の処分が行われます。破産管財人は、すべての債権者が平等に弁済を受けられるように財産の処分を行う必要があります。

破産会社の中には、特に懇意にしていた債権者にだけ先に債務を返済しようとするケースがありますが、これは債権者の平等を侵害するもので認められません。そのため、破産管財人は、破産手続き開始前に返済してしまった財産について取り戻すことができます。この権限を「否認権」といいます。

会社の破産,特に中小企業の破産において特に問題となるのが,この否認権の問題です。

否認権が行使されると、場合によっては訴訟を提起するようなことになり,かえってその債権者に迷惑をかけることになるおそれがあります。

○労働・雇用関係の整理

また、会社破産において大きな問題に発展しがちなのは、労働雇用の問題つまり従業員との法律関係です。従業員にしてみれば、勤務先がなくなるのですから非常に強い反発が生ずる可能性があります。雇用関係に基づく賃金は、他の債権に優先して弁済または配当がなされますが、必ずしも優先弁済や配当できるとは限りません。

会社を破産する場合には,従業員に対しても誠意をもって説明しておく必要があります。その上で、個々の状況によっては、破産申立て前に従業員を解雇しておく必要があるかもしれません。なお,従業員を解雇する場合には,賃金だけでなく,退職金を支払い旨の労働条件を設定しているならば退職金、また、即時解雇等であれば解雇予告手当などについても注意を払っておく必要があります。ただし、あまりに早く従業員に自己破産することを告げてしまうと,そこから他の債権者に情報が洩れてしまうという可能性もありますので、注意が必要です。

これらのように、破産手続きを行う場合はさまざまな点に配慮しながら進めていく必要があります。弊事務所には、破産等倒産処理を得意とする弁護士が揃っております。お困りのこと等ございましたら、お気軽にご相談ください。

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