労働審判に適した事件と適さない事件
労働審判に適した事件
・解雇等無効
解雇等無効事件とは、典型例として、突然会社から解雇を言い渡されたことから、解雇の無効を主張して、従業員としての地位が現在もあるとの確認を求める事件です。前述例は従業員としての地位を求めることで復職を求める場合ですが、早期金銭解決前提で復職を求めず退職の合意と解決金の支払という形で和解する場合もあります。
・残業代等の支払請求
残業代や未払い賃金の支払いを請求する事件は、前述の解雇等請求と合わせて請求することが多いですが、従業員という立場で単独で請求する場合もあります。
残業代の支払いについては、労働時間の立証が重要となります。しかし、労働時間の管理は会社それぞれであり、タイムカードや業務日誌など労働時間の立証に重要な証拠がない場合もあり得ます。
そのような場合には、同僚の証言や従業員側の日記・メモによって大まかな労働時間や残業時間を出す方法に寄らざるを得ません。したがって、立証困難という点で訴訟は困難であるといます。
これに対して、労働審判では会社側に反証を求め、会社から資料が提出される場合もあり、柔軟な解決が図られます。
労働審判に適さない事件
・過労死、パワハラ、セクハラ等による事件
過酷な労働によって従業員が死亡した場合、パワハラやセクハラによって精神的損害を受けた場合には、会社に対して、従業員死亡による逸失利益や精神的苦痛による慰謝料の損害賠償を求める労働審判が考えられます。
しかし、このようなケースでは、争点や立証が複雑かつ困難となる場合が多く、迅速な解決が求められる労働審判には適しません。
また、パワハラやセクハラのケースでは、録音など客観的な証拠が残されていることが少ないため、被害者供述・加害者供述いずれの供述の信用性が高いか審判の段階では明らかとはなりません。
そのため、このような事件では、法廷における反対尋問で供述の信用性のチェックをする必要があり、この点からも労働審判は適しません。