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解雇と就業規則について

事例

私は小売業を経営する者です。

数か月前から従業員が無断欠勤を繰り返しており、再三の注意にもかかわらず度重なる無断欠勤があったため、その従業員を懲戒解雇しました。

我が社には解雇について就業規則上の定めを置いていないのですが、前述の解雇について何か法律上の問題はあるでしょうか?

総論

使用者が事業を行うにあたっては、多数の労働者を雇うことになります。

労働者の労働条件をそれぞれの雇用契約において決めることは可能ですが、1人1人の労働者ごとに取り決めを行うことは、使用者にとって手間となるばかりではなく、労働者の間で不平等を生じさせ、かえってトラブルを生じさせる恐れがあります。

そこで、使用者としては、労働者の労働条件を公平・統一的に設定しかつ職場規律を規則として設定することが、効率的な事業経営のため必要不可欠となります。

この規則というのが、「就業規則」というものです。

では、使用者は、就業規則でいかなることを定めるべきでしょうか?

特に、就業規則を作成するにあたっては、労働者を解雇する場合、就業規則にその根拠が存在しなければならないのか?という点が大きな問題となります。

そこで、就業規則と解雇の関係について検討してみたいと思います。

解雇と就業規則との関係について

解雇とは、使用者による労働契約の解約をいいます。

解雇には、大きく分けて3つの類型があります。

それは、懲戒解雇、普通解雇、整理解雇です。

では、いかなる類型の場合、使用者が労働者を解雇するには、就業規則に根拠を置く必要があるのでしょうか?

(1)懲戒解雇について

懲戒解雇とは、懲戒処分としての解雇、すなわち従業員の企業秩序違反行為に対する制裁罰のことをいいます。

通常の企業では、懲戒解雇、論旨解雇、出勤停止、減給、戒告、訓告などがあります。

懲戒解雇が就業規則に根拠を必要とするかについては、大きく2つの考え方があります。

まず1つは、使用者は規律と秩序を必要とする企業の運営者として当然に固有の懲戒権を持っていると考え、懲戒解雇には就業規則上の根拠はいらないとする考え方です(以下、固有権説といいます)。

もう1つは、使用者の懲戒処分は、労働者が労働契約において具体的に同意を与えている限度でのみ可能であると考え、就業規則上、懲戒処分の根拠規定が明確に必要であるとする考え方です(以下、契約説といいます)。

判例は、基本的には固有権説に立っているものの、使用者は労働者に対して「規則の定めるところに従い」懲戒処分なしうると述べており、就業規則に明確に規定して初めて懲戒解雇ができるとしています。

したがって、懲戒解雇をするにあたっては、「就業規則に根拠を定めなければならない」ということです。

これは、普通解雇や整理解雇とは大きく異なるところです。

(2)普通解雇の場合

普通解雇とは、従業員が病気で働けなくなったとか、労務の適性を欠いていると判断されて、解雇されるパターンです。

ここで、使用者と労働者との間に締結されている労働契約は、民法上の雇用契約です(民法623条)。

したがって、就業規則がない場合であっても、使用者は、民法627条に基づいて、労働者を普通解雇することができます。

しかし、普通解雇の有効性をめぐっては、解雇権濫用法理という判例法理が確立されており、同法理は平成19年に制定された労働契約法16条によって明文化されました。

同法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。

一見権利の濫用にあたらなければ解雇は自由にできるとも読めますが、解雇の合理性と相当性の立証責任は使用者側に課されることとなるため、解雇のハードルが高くなっているのが現実です。

(3)整理解雇の場合

整理解雇とは、会社の経営を維持するため、人員削減目的でなされる解雇です。

整理解雇も、普通解雇と同様に、就業規則に根拠がなくても解雇することは可能です。

ただし、整理解雇の有効性をめぐっても、判例法理が確立しており、①人員削減の必要性、②人員削減の手段として整理解雇を選択する必要性、➂被解雇者選定の妥当性、④解雇に至る手続きの妥当性が、整理解雇の4つの要素として挙げられています。

これら全ての要素を満たす必要はありませんが、4つの要素を総合考慮した上で整理解雇の合理性・相当性が判断され、合理性・相当性がないとされれば、解雇権の濫用として整理解雇は無効となります。

具体的には、①については、不況・経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていることが必要です。②については、配転、出向、一時帰休、希望退職など他の手段によって解雇回避の努力がなされたかが考慮されます。➂については、客観的で合理的な基準を設定し、それを公平に適用することが必要です。④については、整理解雇について十分な説明を行うことが必要となります。

転換の可否と再度の解雇の可否

少し細かい話ですが、懲戒解雇が無効である場合、普通解雇の意思表示をも包含するものとして、普通解雇として有効となるかという問題があります。

この場合には、確定した判例はありませんが、裁判例は、懲戒制度が存在し、懲戒解雇と普通解雇が制度上区別されている企業においては、懲戒解雇は企業秩序違反に対する制裁罰として普通解雇とは制度上区別された者であって、実際上も普通解雇に比して特別の不利益を労働者に与えるものであるとして、懲戒解雇の意思表示はあくまで懲戒解雇の意思表示に過ぎないともしていますので、普通解雇として認められない可能性が十分あるものと考えられます。

総括

以上の点から、解雇については、普通解雇であれ、懲戒解雇であれ、可能な限り就業規則で定めるべきであると考えられます。

そうすることで、労働者との労働契約が明確になることで企業経営が効率的になるばかりでなく、労働者とのトラブルを事前に回避することができます。また、仮に、万が一労働者とトラブルとなった場合には、使用者にとって就業規則の定めが対抗手段として用いることも期待できます。

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