労働組合(ユニオン)から団体交渉を申し入れられたときの対処方法
ーーー本記事のポイントーーー
①ユニオンとは
②団体交渉は断れない?
③団体交渉のリスクや注意点
④ユニオンから団体交渉の申し入れを受けた場合の対処法
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従業員との間にトラブルが発生すると、聞いたこともない「ユニオン(合同労組)」から団体交渉を申し入れられるケースが少なくありません。
自社内に労働組合がなくてもユニオンからの団体交渉には対応しなければならないので、申し入れを受けたら放置しないように注意しましょう。
今回はユニオンとは何か、団体交渉を申し入れられたときにどうすればよいのか解説します。
1.ユニオンとは
ユニオンは労働組合の一種です。従来型の企業内労働組合は社内の従業員が組織するのが通例ですが、ユニオンは会社の垣根を超えて、広く労働者が連携して組織しています。
全国の労働者なら誰でも加盟できるもの、地域ごとや業種ごとになっているものなどがあり、「合同労働組合」や「合同労組」ともよばれます。
ユニオンも労働組合の一種なので、労働組合に保障される権利が認められます。労働組合には会社への団体交渉権があるため、自社の従業員がユニオンに加盟したらユニオンから残業代や解雇などを巡って団体交渉を申し入れられる可能性が発生します。
ユニオンの特徴
ユニオンは企業内労働組合と異なり、企業へ帰属意識を持ちません。目的は「労働者の権利を守ること」につきます。そこで会社へ配慮を一切せず、労働者の権利を最大限主張する傾向が強くなっています。
実際に団体交渉を行う際にも企業側の弱点を突いて有利な条件を引き出そうとするなど、企業側にとっては厳しい態度をとってくるケースが多数です。
ユニオンは全国にたくさん存在し、近年ではインターネットで簡単に加盟できます。
現代の日本では、従業員の加盟したユニオンが強硬な態度で団体交渉を申し入れてくるリスクが増大しているといえるでしょう。
2.団体交渉は断れない?
ユニオンから団体交渉を申し込まれたとき、正当な理由なしに断ってはなりません。
労働組合には団体交渉権が保障されるからです。正当な理由なしに企業側が団体交渉を断ると、不当労働行為となって企業側にペナルティを課されるリスクも発生します。
ただしすべての申し入れに応じなければならないとも限りません。
以下のような場合には団体交渉を断れる可能性があります。
2-1.相手が労働組合ではない
相手が労働者の代理として交渉を求めていても、ユニオン(労働組合)でなければ応じる必要はありません。
ただし法律上の労働組合に該当するかどうかの判断には専門知識が必要なので、不明な場合には弁護士までご相談ください。
2-2,団体交渉に適さない事項を要求された
団体交渉を申し入れられたとき、企業が義務的に対応しなければならない事項とそうでない事項があります。
義務的団交事項は、組合員の配置転換、出向、解雇、昇格・降格、休職、復職、懲戒基準などについてです。
一方、人事権や施設管理権などの事項は企業側が決めるべきであり、団体交渉に適しません。
そういった問題についての交渉を求められたら断れると考えましょう。
ただ自己判断するのは危険なので、断る前に弁護士へ相談するようおすすめします。
2-3.暴力的な団体交渉
労働組合側が暴力的、脅迫的な言動をとる場合には団体交渉を断れる可能性があります。
3.団体交渉のリスクや注意点
ユニオンからの団体交渉申し入れに対応する際、企業側には多大なリスクが発生します。
以下で注意点をふまえてみていきましょう
3-1.交渉期間が長期に及ぶ
企業と労働組合との団体交渉が1回や2回で終わるケースは少なく、長期化しやすい傾向があります。長期にわたって団体交渉が続くと、会社側も疲弊してくるでしょう。
最終的に企業側が折れて不利な協定を締結させられるリスクも高まります。
3-2.不当な要求に応じてしまう
ユニオンからの要求内容が必ずしも適正とは限りません。ときには不当な請求をされる可能性もあります。たとえば高額過ぎる慰謝料や解決金を要求されるケースはよくあります。
ユニオン側の要求が不適正であれば、応じるべきではありません。しかし会社がユニオンから強硬に責め立てられると企業側が「要求に応じなければならない」と感じ、ときには不当ともいえる要求に応じてしまうケースがみられます。
「どこまでが不当でどこからが正当か」の判断は法的知識がないと困難でしょうから、迷ったときには自己判断せずに弁護士へご相談ください。
3-3.会社側が不利になりやすい
合同労組(ユニオン)は一般的に企業内労働組合より高い交渉力をもっているケースが多数です。たとえば大人数で参加して会社へ野次を飛ばしたり、時には罵倒したりするケースも珍しくありません。
威圧的な態度をとられると、会社側が本来受け入れるべきではない条項を受け入れてしまい、労働協定を締結されるケースもみられます。
会社が不利になりやすいのも合同労組による団体交渉のリスクの1つといえるでしょう。
3-4.不当労働行為となってしまう
ユニオン側からの不当要求に応じる必要はありませんが、会社には団体交渉に応じるべき義務があります。「義務的団交事項」には誠実に対応しなければなりません。
単に交渉すればよいというものではなく「誠実に対応」しなければならないので注意が必要です。
会社側が自己判断で対応すると、ユニオン側から「不誠実交渉」と主張されて、労働委員会へ救済命令の申立をされるリスクが発生します。
救済命令が出ると会社に不利益が及ぶ可能性があるので、くれぐれも不当労働行為をしないよう注意しましょう。
4.ユニオンから団体交渉の申し入れを受けた場合の対処法
4-1.日時や場所の調整
ユニオンから団体交渉の申し入れを受けたら、まずは日時や場所を調整しましょう。
たしかに企業側には団体交渉自体には応じる義務がありますが、ユニオン側の指定する日時に対応する必要はありません。場所についても、商工会議所などの外部で交渉を行うことも可能です。1回の交渉が長期化すると疲弊するので、開始時刻と終了時刻も定めておくとよいでしょう。
4-2.準備を行う
次に当日に向けての準備をすべきです。どういった問題がとりあげられているのか、それに対してどのように説明や対応をするのか検討しましょう。
誰が出席するのかも決めるべきです。必ずしも代表者、経営者が出席する必要はありません。
代表者が出席すると、その場で労働協定への調印を求められるリスクも高まります。
状況に応じて会社側の出席者を決定しましょう。
またユニオン側の出席者が多いと場が混乱する可能性もあるので、人数を限定するよう取り決めるようおすすめします。
4-3.その場で協定に調印しない
団体交渉の当日、組合側から労働協定などの書面への調印を求められるケースが多々あります。しかしいったん不利な協定を締結して有効となると、その後会社が不利益を受け続けるリスクが発生します。その場では調印せず、持ち帰って検討しましょう。
4-4.配置換えや給与待遇の変更は慎重に
特に団体交渉が継続している間の従業員待遇の変更には慎重になるべきです。
「労働組合へ加盟したことによる不利益取り扱い」と主張されるリスクが発生するためです。どうしても配置転換や給与待遇等を変更する場合、理由を明らかにして適正な手続きをとるべきです。
4-5.団体交渉での暴言を放置しない
団体交渉中、ユニオン側が暴言を吐いたり威圧的な態度をとったりするなら放置すべきではありません。録音するなどして証拠を残し、明確に抗議しましょう。程度がひどく改善されない場合、暴言を理由に団体交渉を拒否できる可能性もあります。
ユニオンからの団体交渉は弁護士までご相談ください
ユニオンから団体交渉の申し入れを受けたとき、会社を守るのは企業側の弁護士です。弁護士が団体交渉への対処法をお伝えするので安心していただけますし、準備のお手伝いや当日の同席、発言などもしてサポートいたします。
埼玉の弁護士法人フォレストでは企業側の労務問題に力を入れて取り組んでいます。突然ユニオンから団体交渉を申し入れられてお困りの経営者の方は、お早めにご相談ください。