16年経過後、親の負債を相続放棄できた経営者様の事例

 

①事実の概要

顧問先の法人経営者のお客様において、金融機関から突然、16年前に亡くなったお母様が負っていた連帯保証債務について、支払を協議したい旨の連絡がありました。

お客様のお父様において、別会社を経営されており、その会社の債務について、お母様が連帯保証していたということでした。

お母様の連帯保証債務額は、元金及び遅延損害金も含め1400万円にも及んでおり、お客様において負担できる状態ではなかったため、相続放棄をご希望されていました。

もっとも、すでにお母様が亡くなられてから16年が経過していたため、相続放棄における「被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内」という熟慮期間を考えると、死後相当期間が経過していることが問題でした。

 

②相続放棄に係る3か月の熟慮期間の考え方

相続放棄について、民法915条1項本文は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認または放棄をしなければならない。」と規定しています。

もっとも、例えば、3か月の熟慮期間経過後に突然多額の債務が発見された場合など、法律どおりに3か月という熟慮期間を当てはめてしまうと、不合理な結果を生んでしまうことも多々存在します。

そのため、裁判例においても、3か月の熟慮期間について、期間内に相続放棄しないことについて、相続財産が全く存在しないと信じたことに相当の理由があり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態、その他諸般の状況からみて、相続人において、相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情がある場合には、3か月の熟慮期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識したとき又は通常これを認識し得るべき時あら起算されるべきとされ、実務においても、裁判例等も基に一定の柔軟な運用がなされているところです。

 

③本事案での相続放棄の是非について

家庭裁判所において、相続放棄を認める判断がなされました。

 

④相続放棄が認められるに至った経緯について

まず、私達弁護士とお客様の間で密に相談を行い、具体的な状況を把握した上で、①亡くなる以前のお客様とお母様との関係(家族仲、お父様の事業とお母様との関係、実家の行き来の頻度等)、③お母様が亡くなった際の状況(お葬式の状況、お母様の財産の把握状況、兄弟間の協議状況等)、③お母様が亡くなった後のお客様の生活状況(実家との関わり等)、④現在のお客様の負債を知った経緯、⑥他の兄弟の相続放棄の状況等について、必要な証拠及び陳述をまとめたうえで、上記判例の考慮要素を踏まえ、相続放棄の手続きを行いました。

この手続においては、お客様においても、裁判所からの調査事項に対し、自ら答えるなど、積極的に手続に関わってくださったことも、結果が出た要因であったと思います。

 

⑤終わりに

本事例のように、形式的に相続放棄の熟慮期間が経過していたとしても、それぞれ個別具体的状況によっては、相続放棄が認められる可能性は十分にあると考えられます。

経営者の方におかれましては、お父様が別会社を営んでおられたケース等に係る、相続債務等が発生する可能性も考えられますので、本件のような相続放棄のみならず、それ以外の相続関係全般でも悩んでおられましたら、弊所までお気軽にご相談下さい。

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